インターネットの世界は、Web2.0からWeb3に移行しています。Web3の世界とは、一体どんな世界なのでしょうか? 今回も、株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。
「Web3」の登場で、プラットフォームの在り方が変わる
三石所長(当時。以下、三石) 今日もよろしくお願いします! 前回は、メタバースやNFTについて面白いお話をたくさん伺いました。今回のテーマは「Web3」ということで、今回もとても楽しみです!
森杉さん(以下、Mr.モリスギ) ありがとうございます! メタバースやNFTも、今回の話にすごく関連していますよ。
三石 さっそくですが、「Web3」について伺っていきます。そもそも「Web3」とは、どのようなものなのでしょうか?
Mr.モリスギ 一言で言うと、Web3とは「分散型のインターネット」です。背景から考えていくと分かりやすいのですが、Web3が広がる背景には、GAFAをはじめとするプラットフォーマーへの反発の動きがあります。
三石 GAFAといえば、米Facebookが独占禁止法で訴訟提起されたり、最近では内部告発されたりしてニュースにもなりましたね。
Mr.モリスギ TwitterやYouTubeなんかでも、ルールを犯した人はアカウントを凍結されたりコンテンツを削除されたりしています。プラットフォーマーたちが自分たちのルールをユーザーに課し、小人数が作るアルゴリズムの中で収益化を最大化するということをやってきたのが、従来の「Web2.0」なんです。これは、ユーザーがコンテンツ作りに貢献しているにも関わらず、大した見返りをもらえず、むしろデータを搾取されている状況です。
三石 YouTubeやTwitterといった何らかのプラットフォームの枠の中で収益を上げていくのが、Web2.0。ユーザー同士の間でやり取りされるお金を、一旦プラットフォームが収集して分配するというやり方ですよね。
これだと、どうしてもそのプラットフォームでアカウントを作らなければならないので情報も収集されるし、手数料もとられてしまう。Web3では、そう言った仕組みではなくなるということですか?
Mr.モリスギ はい。Web3では、プラットフォームを介さずに直接ユーザー同士でデータやお金のやり取りができるようになります。
なぜその仕組みが可能なのかはこれからお話ししますが、Web2.0からWeb3の世界に移行することによって、コンテンツを作った人が報酬的にも報われる世界観が生まれます。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
「Web2.0」から「Web3」への移行によって、プラットフォームによる独占から解き放たれる世界となる。
Web3の構築に欠かせない3つの概念−FT・NFT・DAO
Mr.モリスギ 「じゃあ、Web3ってどうやって作るの?」という話ですが、私は、Web3の仕組みに欠かせない要素として、FT(Fungible Token)・NFT・DAOという3つの概念が必要だと思っているんです。
三石 ん~、あまり聞いたことのない単語が出てきました。
Mr.モリスギ 超訳して解説すると、FTというのは、「仮想通貨をはじめとした価値の交換が可能なトークン」。たとえば、クラウドファンディングや投げ銭などに使われます。NFTは前回お話ししましたが、「デジタルで所有権・限定性をもたせたトークン」のことです。そしてDAOというのは、「分散自律型組織」のことです。
要するに、何かプロジェクトなりサービスなりを進めていくには、「通貨」、「コンテンツと所有権」、「組織と意思決定」の3つが必要ということです。
三石 NFTは前回伺いましたよね。FTはいわゆる仮想通貨だと。DAOというのは本当に初めて聞きました。
Mr.モリスギ DAOは、たとえばあるプロジェクトがあるときに、どうやって進めていくか、その中のコンテンツがどういう方向に行くべきかということを、中央集権的に決めるのではなくて、トークンを持っている人がトークンを使って「投票」という形で決めていく仕組みです。
この3つ以外にもいろいろありますが、私はこの3つがWeb3の構築には重要だと考えています。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
プラットフォームが中央集権的に資金もデータも集めていた「Web2.0」。それに対する反発から、分散型・ユーザー中心の世界観が生まれた。
NFTを活用してユーザーをオーナー側に巻き込めば、プロジェクトの応援者を爆発的に増やすことができる
Mr.モリスギ たとえば、僕がハリー・ポッターのような小説を書いて売りたいとします。でも資金がないので資金調達をしたい。方法としてはいろいろありますが、コンテンツをNFT化して「こんな小説を書くので、サポートしてください」といって、NFTを開放する対価として、クラウドファンディングで資金を集めることもできます。
三石 NFTを開放すると、何ができるようになるんですか?
Mr.モリスギ 支援者がこの小説のオーナーになることができるんです。株式と似たような仕組みですね。株式を売って資金を調達するように、この小説の権利を相手に渡して資金調達をすることができる。
三石 なるほど。映画の制作委員会のようなイメージですか?
Mr.モリスギ そうです。ただ、制作委員会だと、契約周りのことや事務処理なんかがものすごく大変ですよね。「収益の何%はA社に、何%はB社に」という取り決めをするのに延々と話し合ったりして、契約書を作って押印をして……となると、かなりコストがかかります。
ところがNFTなら、権利がほしいならただ仮想通貨を払えばいいだけなので、事務処理や契約が極めて効率化できます(ブロックチェーン上のスマートコントラクトでコードとして契約が執行され、ブロックチェーン上の仮想通貨で自動的に収益分配される)。しかも、いらなくなったらそのNFTは売ればいいので、流動性が非常に高い。
三石 もしその小説が大ヒットしたら、かなり高値で売れる可能性もありますよね! しかもNFTを設定しておけば、二次流通時にも手数料が入ってくる。
Mr.モリスギ 読み手側も、自分が持っているNFTの価値が上がれば利益を得ることができるとなると、そのプロジェクトに協力したくなるわけです。そうすると、ユーザーでありながらオーナーでもあるということで、そこで1つのコミュニティが形成されます。
NFTも、100じゃなくて1万に分割したっていいわけです。1万人のファンを巻き込んで「ハリー・ポッターを作るぞ!」と言って、ビッグプロジェクトにすることもできます。
三石 それは、既存のプラットフォームでできるかというとやっぱりできない。NFT化することは、流動性やフレキシビリティが高く、ユーザーへのメリットも非常に大きいわけですね。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
コンテンツをNFT化することで、ユーザー側もプロジェクトが成功したときに大きな利益を受け取ることができる!
運営がおらず、サービス運用のコストも排除。「HiDE」に見る、Web3時代のマネタイズ
三石 たとえばnoteでも、文藝春秋がデジタル定期購読サービスを開始しています。文藝春秋に払われる購読料をnoteが課金代行しているわけですが、これはWeb2.0の仕組みですよね。Web3では、こうしたnoteのようなプラットフォーム自体がない、ということになるんでしょうか?
Mr.モリスギ そうですね。「HiDE」というサービスを見てみましょうか。
三石 ブログを書くツールですか? なんだかnoteっぽいですね。
Mr.モリスギ HiDEは分散型のコミュニティ・ブログです。HiDEの特徴として、運営という概念がありません。「ブロックチェーンや暗号通貨といった最新技術を活用して、従来のサービス運用コストや運営の存在自体を排除したピアツーピア(個人間取引)の仕組みを構築しています。」とHiDEのページに記載があり、まさにWeb3の体現化といえます。
(※編集部注:ピアツーピアとは「Peer-to-Peer」の略称で、サーバを介することなく端末同士が直接接続し、データの交換などができる通信方法のことです。)
三石 なるほど。このHiDEというのは、プラットフォームではないんですね? でもHiDE上でビジネスをしていることには変わりはないわけですよね。そうすると、今は無料であっても突然「今後は手数料がこれだけかかります」と方針が変更することはないんでしょうか?
Mr.モリスギ それはありえます。ただ、それを是正する仕組みが、さっき出てきたDAOなんですよ。
三石 「分散自律型組織」でしたよね。トークンを使ってユーザーが投票できるようにすることで、みんなでプロジェクトの方向性を決めていくという。
Mr.モリスギ そうです。株主総会みたいなもので、「プロジェクトがこの方向に進むのはダメだ」と思えば、投票して意思表示をするわけです。株式だと、一定数以上の株式を持つ少数の株主や機関投資家しか影響力を行使できないことが多いですが、DAOならトークンを持っていれば誰でも議決権を持ち、意思決定の投票に参加することができます。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
ユーザーがトークンを購入し、それを議決権のように使ってプロジェクトやコンテンツの方向性を決めることで、プラットフォームそのものが不要になる!
三石 今回も非常に勉強になりました! 次回はさらに踏み込んで、地域活性や行政の活用事例についてもお話を伺っていく予定です。
―――次回の【海外Hot Info】では、Web3によって変化する社会について、そしてクリエイターの変化についても、引き続き森杉さんにお話を伺います。次回もぜひお楽しみに!