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米国の買い物に大きな変化!最新トレンドに注目【海外Hot Info】vol.8

2021.11.25

―――世界各国の先進的な取り組みから、旬で“GROWTH”につながりそうな企業・サービスをご紹介する「海外Hot Info」。10年以上デジタルマーケティングに携わってきたGROWTH INNOVATION LABの三石所長(当時)が、その知見をもとに海外のデジタルマーケティングのトレンドについて切り込みます。

三石所長(当時。以下、三石) 本日はお時間頂きありがとうございます。今回は、スタートアップの全面的支援を行っているベンチャー・キャピタル「NTTドコモ・ベンチャーズ」シリコンバレー支店の飯野 友里恵さんに、「EC業界を取り巻く米国の環境変化」について、お話を伺います。

(編集部注:NTTドコモベンチャーズ様の紹介については、vol.1 の記事で詳しく紹介させていただいておりますので、ぜひご覧ください!)

飯野 友里恵さん(以下、飯野) はい、よろしくお願いいたします!

飯野 友里恵NTTドコモ・ベンチャーズ Silicon Velley Branch ManagerNTTドコモ新卒入社後、docomoのB2Cサービスの企画・開発に従事。docomoのAIアシスタント「my daiz」の企画やPFMやIoTのB2C向け新規サービス立ち上げを担当。docomoのカスタマーサポートに関連したアプリやWEBサイトの改善も実施し、アプリDL数を7倍、WEBサイトのPVが200%アップを達成し部長表彰を受賞。様々な分野のサービスデベロップメントを主に担当してきた。現在は、これらのサービスデベロップメントの経験を活かし、オープンイノベーションでスタートアップとの協業によるサービス企画を担当。VR/XR、AI、Workinnovation、Entertainmentなどの領域における投資および事業開発を実施しており、スタートアップの技術を組み込んだ映像コンテンツの創出やWEBサイトのスケールアップ、法人等からのSaaSソリューションの販売といった様々な形で協業を実現している。​

顧客接点を最小化し、駐車場で商品を受け取り!Whole Foodsが「Door Dash(ドアダッシュ)」「Instacart(インスタカート)」と提携

三石 それではまず、EC業界を取り巻く米国の環境変化について教えていただけますか?

飯野 はい。今回は大手コマース関係のホットトピックをまとめました。1つ目は、Whole Foods(ホールフーズ)という食料品店が、UberEatsのような各種配送サービスと提携し、店舗商品の即日配送を始めたことです。

EC業界を取り巻く米国の環境変化①

提携先はDoor Dash(ドアダッシュ)とInstacart(インスタカート)です。Door Dashは、スーパーやレストランの食べ物を配達してくれるサービスです。Instacartは、オンライン上のメニューから注文すると、店員が実際に店舗の商品を選んで用意し、すぐ引き取れるようにしてくれたり配送してくれたりします。伝統ある食料品店Whole Foodsと、比較的新しいサービスであるDoor DashやInstacartが提携し、新しい販路を生み出している点がとても面白いですね。

また、Instacartは「カーブサイドピックアップサービス 」というサービスも提供しています。注文した商品を集めた上で、袋に入れて駐車場まで持って来てくれるんです。アメリカは車社会で駐車場がとても広いので、買い回った後に商品を持って車まで行くとなると、買い物も大変で……。 そこで、事前にネットで注文しておき、仕事終わりやちょっと出かけたついでに駐車場に寄って受け取る、というこのサービスが広まってきているのです。

三石 なるほど。Door DashやInstacartのような外食の配達が仕組み化されて評価も得て、それが既存の食料品店であるWhole Foodsにも広がっていったんですね。とても面白い動きです。ちなみに、米国のWalmart(ウォルマート)もDXをどんどん進めていると聞いています。新サービスをWalmartが初めて、それをスタートアップがまねて広めていく、という動きが流行っていると聞いたのですが、このあたりはいかがでしょうか。

飯野 はい、Walmartも同様にInstacartを導入しています。今、アメリカではDoor Dashが広く使われていて、飲食店の商品配送についてはかなり支配的にユーザーを獲得している状況です。さらにコロナウイルスの影響で、「店舗の中で買い回ってもらう」というやり方では物が売りづらくなりました。そこでDoor Dashのような、人との接点を最小限化できる配送サービスが、爆発的に使われるようになったのです。この流れに乗る形で、Whole Foodsのような食料品店もDoor Dashと提携し、そのプラットフォームに乗っかるという動きになっているのだと思います。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

コロナ禍を経て、アメリカでは食品配送サービスの幅が広がった

三石 なるほど!ちなみに、日本では似たサービスはあるんでしょうか?

飯野 最近では関東にあるディスカウントスーパー「OKストア」が、10月にネット宅配事業を始めたばかりですね。いずれにしろ、日本でもこれから発展していきそうです。

三石 「カーブサイドピックアップサービス」についても、興味深かったです。こちらはたとえば、駐車場の125番に車を停めたら「125番に商品を届けてください」と依頼はできるのでしょうか?

飯野 食料品店や商品に番号が振られていて、店員が所定場所まで持ってきてくれます。顧客は駐車場内の受け取り場所で番号を店員と確認してから、受け取る形になっています。ちなみに「カーブサイドピックアップサービス」はWalmartが率先して始めたサービスで、現在は2000店舗以上で導入されているんですよ。

三石 そこは一応、人同士で認証するんですね(笑)。まぁ、代わりに持って行かれたら困りますもんね。なるほど、ありがとうございます!

TikTokが「Shopify」と提携!ライブコマースで「個人が稼げる時代」に

EC業界を取り巻く米国の環境変化②

飯野 2つ目の環境変化ですが、TikTokがShopify(ショッピファイ)と提携し、ライブコマースに本格的に参入しています。これまでもYouTubeやInstagramでライブストリーミングや、ストーリー形式の動画を流すことがトレンドになっていました。最近では、そこから「物を売る」というライブコマースが非常に流行ってきています。

(編集部注:ライブコマースとは、たとえばライブ映像でインフルエンサーの方が商品を紹介し、ユーザーがプラットフォームのリンクから購買サイトに飛んで、商品を買う仕組みです。)

TikTokがShopifyと提携することで、ユーザーがTikTok内にショップを持てるようになり、視聴者側が配信側に回って販売することが可能になりました。また、TikTokは決済プラットフォームSquare(スクエア)との提携も進んでおり、実際に購入する際の決済手段のバリエーションも増えてきています。

三石 「見て買う」というライブコマース機能を提供しているサービスは、今のところShopifyだけなんでしょうか。

飯野 個人が物を売れるプラットフォーム、特にライブコマースという文脈では、とてもサービスが増えてきています。TikTokの例は、SNSでは「物を売る」という文脈のUIや機能がなかったので、それを備えるためにShopifyと提携したパターンです。しかし最近では、このライブコマースに特化したアプリ、つまりTikTokとShopifyそれぞれの機能が最初から備わっている独自のサービスが、たくさん出てきています。今後はたくさん出てくるライブコマースのサービスの中で、「どこに一番人が集まるか」という競争になっていくと思います。

TikTokのような動きは日本でもあります。最近メルカリが「メルカリShops」という機能をリリースしました。一般の方やクリエイターの方が、メルカリ内に自分のストアを開き、自分のブランドの商品やハンドメイド作品などを販売できるんです。また、弊社が出資しているパロニム株式会社も、「TIG LIVE」(ティグ ライブ)という、ストリーミングを見ながらタップして商品ページに飛んだり、「いいね」を押せたりするプラットフォームを提供しています。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

個人が物を売れるライブコマースは今かなり増えており、日本にも広がりつつある

三石 Instagramは、まだライブコマース機能はリリースしていないんですか?

飯野 Instagramはまだですが、ストーリーやライブストリーミングで物を紹介し、視聴者がリンクで商品ページに飛んで物を買う、という動きが実際に起こっています。ただこの動きは、UX上あまりよいものではありません。別のサイトやアプリに飛んで、商品をまた選んでカートに入れて、やっと購入に至るので。それよりは、TikTokのようにShopifyと提携して、Instagramの中だけで完結した方がいいですよね。

三石 Instagramはじめ、今後のSNSのライブコマースの進化に期待ですね。アメリカにも、やはりどんどん物を売るようなライバーはいるんですかね?

飯野 まず、日本では4代目バチェラーの黄皓(こうこう)さんが、SNS上でかなりうまく自社商品や他社商品をPRし売っていますね。恋愛リアリティーショー『バチェラー・ジャパン』の出演者たちは、SNSのフォロワーが10万人単位でいるので、大体の方がInstagramで広告を打ったり物を売ったりしています。
アメリカでも同様に、バチェラー出演者など「一般人以上芸能人未満」の方が、インフルエンサーとして物売りをして成功していくという動きはあると思います。

三石 そうですよね。バチェラー出演者たちは、 Amazonにレベニューシェアしないと駄目なくらい稼いでいそうですね。認知も上がっていそうですし。

飯野 ライブコマースを通して、個人が稼げる時代になっていくということですね。ちなみに、アメリカでもバチェラーがPRをしているのを見かけたことがあります。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

ライブコマースの広がりにより、個人が稼げる時代になっていく

クレジットカードはもう不要!後払いサービス「affirm」の導入で約2000億円ものEC需要を創出

EC業界を取り巻く米国の環境変化③

飯野 最後の環境変化ですが、アメリカではAmazonがカード不要の後払い決済サービス「Affirm(アファーム)」を導入しました。後払い決済サービスはBNPLとも呼ばれ、BNPLとは「Buy Now Pay Later」の略称です。つまり、クレジットカードなしで購入し、後払いができるというサービスです。AffirmはBNPLの最大手といわれており、それをAmazonが2021年8月から導入しています。

Affirmを導入すると、クレジットカードをお持ちでない方も、3か月~48か月の分割払いができるようになります。金利は年利0%~30%で、50ドル以上の買い物においてAffirmが使えるようになっています。この変化のすごいところは、Affirmを導入してからの約6年間で、なんと2000億円ほどのEC需要が生み出されたことです。米国ではクレジットカードを持てない方が多く、「後払いをしたい」というニーズがかなりあったようです。そういう方たちが一気にAffirmで買い物をするようになり、2000億円の需要を生んだということなんですね。実際にBNPLは今も広く導入されていて、北米のEC事業者トップ1000社のうちの約3割が、BNPLの導入をしているという統計もあります。

使い始めの手軽さと、ビジネス向けのプラットフォームが充実していたことも、BNPLの強みです。BNPLは与信の考え方がクレジットカードと異なり、電話番号とメールアドレスがあれば、即時発行できます。後払いしたいタイミングでその人の購入履歴や買いたい商品を審査し、買い物ごとに分割回数や後払い可能な金額が決まるんです。また、システム的にも導入が簡単でUIも優れているので、新しいECサイトやアプリを作る時に組み込みやすい。こうした、店舗側と顧客側の両面にメリットを生み出したことが、米国のEC環境に非常に大きな変化を与えています。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

「Affirm」の導入で約2000億円ものEC需要が生まれ、BNPLが広まっている

三石 確かに、今までのクレジットカード事業者ってめちゃくちゃUX良くないですよね。画面がすごく古いので、ちゃんと通るかドキドキします(笑)。買い物のたびに与信の審査があるというのも、理論上は学習で実現できそうですけど……ちょっと考えただけだと、想像を絶しますね。

飯野 そうですね、それを実現してしまうので、勇気があるなという気がします。

三石 電話番号とメールアドレスだけでカード発行できるというのも、衝撃的です。日本でいうところのキャッシングを、オンラインでサクッとできてしまう、ということですよね。店舗としても導入しやすく、顧客としても買い物体験が充実する。全体で盛り上がっているということですよね。

飯野 そうですね。こうした3つの変化をはじめとして、アメリカでは買い方も支払い方もどんどん広がってきています。 

―――次回の【海外Hot Info】も、引き続きNTTドコモベンチャーズ様に「EC業界を取り巻く米国の環境変化」について教えていただきます。ぜひお楽しみに!

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