第2回目もスタートアップの全面的支援を行っているベンチャー・キャピタル「NTTドコモ・ベンチャーズ」のBusiness Developemnt&Investment担当Manager 井上 正裕さん、Incubation担当Director 加納 出亜さん に、「Augments-Analytics(オーギュメンテッドアナリティクス/拡張分析)」がアメリカで急成長した背景や日本のデータ解析が今後どのように変革するのかについてのお話を伺います。「Augments-Analytics」とは何か、またNTTドコモベンチャーズ様の詳しい紹介については、第1回目の記事 をご覧ください。
それでは、続きを見ていきましょー!
3~4年で急成長を見せる「Augments-Analytics」領域。背景にはアメリカのデータ解析手法の定着も
井上 正裕さん(以下、井上さん) 私自身が「Augments-Analyticsが急成長している」と実感した例を紹介します。2021年6月の時点で投資の資料を作成したのですが、その時点ですでに前年の半分以上の資金が集まっていました。なかには、1社で120millionドルの資金調達した会社も。また、2020年も約90件ほど投資がありましたが、その約1/3が「Augments-Analytics」系の領域に集まっていたんです。
三石所長(当時。以下、三石) この領域自体が立ち上がってまだ3~4年なのに、もうそんなに成長しているんですね!
≪三石所長(当時)`s Memo≫
「Augments-Analytics」領域の市場は、近年急成長している
井上さん こうした流れを経て、「Augments-Analyticsの領域はもっと伸ばすべきだ、そしてビジネスのサイクルを早めるべきだ」というところが、アメリカでは見直されてきているのです。
三石 「Augments-Analytics」がないと、示唆出しのような本質的な作業をする時間を、処理業務に取られてしまいますよね。そこがかなり解消されますね。
加納 出亜さん(以下、加納さん) 井上さんから見て、この技術ってなぜできるようになったと思いますか?ある程度方法論がわかってきてそれをAIが学習したから? それとも、「ひょうたんから駒」みたいに、異なる切り口からのアプローチがあり、それが実って突然登場してきたんでしょうか。
井上さん 僕の予想では、ある程度方法論がわかってきたからだと思います。アメリカのデータ解析技術はすごく進んでいて、僕が3年前にアメリカに来た時も、すでにマーケティングのデータ解析手法はかなり定まっていたんです。「データ解析はその手法に当てはめればいいよね」という形が定着してきた結果、「Augments-Analytics」が出てきたのではと思います。
加納さん 基本の型があるから、それをAIが扱えるようになったというところですよね。DX(デジタルトランスフォーメーション)とかRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と一緒で、こうした領域にもRPAの波が押し寄せているという。
井上さん そうですね。各領域でそういった「勝ち筋の王道」の手法が定義されていて、そのうえで「どのデータに相関があるのか」と分析し、アクションしていく。その道筋が見えているおかげかなと。
いずれは日本でもデータ解析をフルオートメーションで行うようになる?自動化とビジネスの先を読むヒント
加納さん 型がないとAIは動かないので、手法の型ができたのは大きいですね。これまでのデータ分析の経験値がたまってきた結果だと思います。日本は今そういう意味でまだまだこれからといったところ ですが、ニトリやUNIQLOみたいな大手リテール 系でOMOに注力する 企業が「型作り」に注力すれば、日本でもみんな「Augments-Analytics」を取り入れるようになるかもしれませんね。
井上さん データ解析後に見たい事象って、大体決まってますもんね。たとえば、CVに対してどのデータが寄与しているのか知りたい時、それがWebサイトの配色なのかバナーの配置なのかとか。そうした決まった事象を探索して、その割合を出すだけなので。色などの解析が面倒な事象は特に、AIが人間では気付かないところまで解析してくれていいですよね。
三石 本当に可能性を感じますね。たとえば、さっきのような「見たい事象」が「クリエイティブと在庫数」という風に掛け算になってくると、解析も高度化します。単一のパターンだけではなく、AIがそうしたクライアントの希望も情報化して整理してくれると楽だし、かなりニーズがありそうですね。
加納さん マーケティングの世界は、「先人の知恵を最大限自動化して使おう」という流れが当面続きそうって話ですよね。
井上さん はい、デジタルマーケティングの世界でも、いろんな領域がそうなっていくと思います。
三石 アメリカはデータを見て本質をとらえることを重要視する傾向がある一方、日本はデータドリブンで数字を見ていくのが苦手ですよね。経験とか勘とか、既知で出来ることの中でビジネスをしがちです。そうした慣習を打破する意味でも、「Augments-Analytics」を取り入れて一気に構造改革が進むといいですよね。
加納さん 日本でも、ECやWeb系の業界では、各企業でほぼ似たKPIを定めるようになりましたよね。昔は企業によってまちまちだったけど、今は基本的にCVR(コンバージョンレート)やCPAとかを予め数値指標決めて善し悪しを判断している。 こういう手法にこなれて各業界ごとに一定の型ができてきたので、「Augments-Analytics」みたいなフルオートメーションに移行していく流れになるのでは。
三石 そういう意味でも、DX化に向けた刷新が、「Augments-Analytics」のような仕組みで加速していくといいですよね。
≪三石所長(当時)`s Memo≫
日本のマーケティング界でも、「Augments-Analytics」での
自動化の波が来そう
加納さん たとえば、専門的な人材のいない中小企業での場合、DXとして「Augments-Analytics」を使う話が出てくるのではないでしょうか。そういうマーケットの見方をしておくと、日本に次出てくるSaaSビジネスは読めてくるでしょうね。
三石 日本での広がりも楽しみですね!僕も刺激を受けました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
井上さん・加納さん ありがとうございました!
―――次回の【海外Hot Info】は、シリコンバレー在住の井上さんに「最近の西海岸ニュース」をお聞きします。コロナ禍の今、シリコンバレーでもオフィスの在り方や働き方が変わりつつあるようです。ぜひお楽しみに!