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【GROWTH SUMMIT 2021 SESSION1】データドリブン業界のファーストペンギン!

2022.02.28

データドリブン業界のファーストペンギン!ゴルフダイジェスト・オンラインのDXへの挑戦の歴史
データドリブン業界のファーストペンギン!ゴルフダイジェスト・オンラインのDXへの挑戦の歴史

この記事は、2021年11月17日に開催した「Growth Summit 2021」のSession 1ウェビナーレポートです。

三石|
本日は、ゴルファーのカスタマージャーニーの観点から、インターネットポータルサイトを通じて多種多様なECサービスを提供されている株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)の志賀様、そして、CRM領域でデータドリブンなOne-to-Oneマーケティングをワンストップで支援されている株式会社ディレクタスの岡本様をお迎えし、企業が今後DXを推進するにあたって必要となるテクノロジーの活用方法についてお伺いします。

DX推進の要諦

三石|
DX推進の実践で重要となるデータ活用の4Stepは、情報を①ためて ②整えて ③分析して ④つかう ことです。これを実際に回す際にDXの要諦となるところを、組織及びプロジェクトの進め方の観点から、志賀さんにお話頂きます。

ユーザー行動起点で組織をデザインする

志賀|
弊社はインターネットサービスから始まっているため、データやデータベースは常に存在しており、DX自体をそれ程意識していません。

その環境下でまず、ユーザー行動視点でマーケティングを考え、顧客体験を向上させるためのUXD(User Experience Design)本部を社内の中心に立ち上げました。
UXDでは、認知から集客、既存会員の育成・ロイヤリティの向上まで幅広くカバーしています。

このファネルで顧客とのタッチポイントを増やし、新規会員獲得→初回購買→リピート促進の流れの中で顧客体験をより良くすることによって、顧客基盤の拡大に特化しています。

プロフィット部門である事業部門の各BU(Business Unit)を横断しながら、ユーザー行動に沿ったUX/CXの改善・支援を行っています。具体的には集客やリードの獲得、リピーター促進、またECと予約やECとメディアといったサービスをまたぐ相互利用も促進しています。

UXD本部には、顧客体験を考えるUX推進部、マーケティング専用の基盤開発を担う情報活用推進部、カスタマーサポートのCS部の3つがあります。
当社がマーケティングをDXできた大きな要因は、UXD本部の下に情報活用推進部を設置したことだと思います。

三石|
顧客体験を最適化するUXD本部を実現するにあたって、苦労されたエピソードはありますか。

志賀|
もともとUXD本部はCRMのプロジェクトから始まり、当初はデータベースマーケティングに近い形でした。その後データ活用による顧客アプローチを行う中で、顧客理念を導入しました。

その後、顧客にただ沢山買って頂くだけでなく、好きになって頂くにはユーザー体験向上が必要となり、CXDの概念が生まれました。そのCがU(UXD)に変わったのは、既存顧客のみでなく、アノニマスな非会員の顧客も考えるべきという発想からです。

つまり、集客の時点から顧客体験を考慮し、コンバージョンでリピーターになって頂く。
お客様だけを最重要指標と捉えて活動をしています。

そういった意味では直近の利益を追っているプロフィット部門とは指標が異なっているので、その目線合わせが非常に重要でした。
この調整は困難を伴ったのですが、成功体験を積み重ねることで少しずつ社内の理解が得られるようになりました。

三石|
ありがとうございます、たくさんのヒントを頂きました。

岡本さんは、支援を多く行われたご経験から、この一気通貫型を一般の企業に適用する場合のポイントがあれば教えて頂けますか。

岡本|
大企業の場合、こういったUXD組織を作るのは非常に難しいと思います。何より、志賀さんたちの強い意志があったからこそ実現できたわけで、DX推進の目的で組織を作るという話ではなかったのだろうと思います。
目的があり、そのために必要な組織を作るという発想が重要であると考えています。

カスタマーエクスペリエンスの改善

三石|
続いて、ユーザーに向けた情報発信という実践の話を伺っていきます。
ファンになって頂くには、まず顧客を理解した上で手を打つステップを辿るのですが、その場合必ずCXの壁にぶつかります。その事例についても志賀さん、お話頂けますか。

志賀|
まず「カスタマーエクスペリエンスを改善する」とは、顧客視点で顧客の気持ちになって顧客体験をしっかりデザインすることであると言えます。
その中で「顧客視点になる」とは、データを集めた上で顧客の行動や思いをできるかぎり読み取ることなのです。顧客視点に立って物事を考えるのが大前提です。

そこで必要となるのは「思いやり」だけです。売り手として顧客のことを考えずにコンテンツやサービスを押しつけたり、購入させようとしない、ということが起点です。
当社も以前は、顧客とのタッチポイントが豊富にあるが故に、一方的な発信をしていました。そこからデータの見直し・分析を始めて、CX改善へとつなげました。

事例紹介:メールによるコミュニケーションの見直し

最初に改善したチャネルはメールです。
多くのサービスを提供しているGDOでは、自社都合で相当な数のメールを配信していました。BU毎に全配信販促メルマガを乱発していたため、1会員に対し1年間で730~1,200通にものぼりました。

各BUで一日に送付してよい数を制限しているにもかからず、結果的に1人の顧客に1日3通上送られる状態になっていました。顧客の行動や心理を全く無視した配信を行っていたわけです。

まずはその配信頻度を半分位まで下げて、顧客の求めるタイミングを顧客行動に合わせて把握するよう努めました。配信のタイミングをステップ型やスケジュール配信型、イベントドリブン型に変更し、配信内容も、顧客との関係性を構築しながら顧客育成目線の時系列に沿う形へと改善しました。

この配信数を減らす、ということも社内で相当の調整がありました。営業部門は配信数が減ることで売上が減少する懸念を持ちましたが、まずはやってみよう、で初めて見たところ、良い結果が出ることとなりました。

コミュニケーション例:エンゲージメント ゴルフ場予約の利用お礼

ゴルフ場の予約をされた方には、毎月一回、その年のゴルフ場利用回数に応じて、顧客に親和性を持たせる内容でお礼メールを配信しています。利用回数が増えるたびに顧客との関係性・心情を考え抜き、徐々に親密なくだけた内容を、感謝の思いを込めながら作成します。

コミュニケーション例:サーチアバンダン 検索したが予約に至らない

ゴルフ場検索をしたが予約に至らなかった顧客には、離脱前の検索条件を記録しておき、別の条件で再度検索してみませんか、といったメールを出しています。

コミュニケーション例:リマインド+刈取り セール終了日告知

顧客が閲覧した商品情報と価格を全て記録し、その商品がセール対象になった場合、セール終了日のお知らせメールを配信します。販促の観点からだけではなく、どんな情報をお知らせすれば喜ばれるかという観点から実装しました。

現在の運用状況は、アクティブなメルマガ会員数が約70万人、シナリオ本数がイベントドリブン型を中心に約100本となっています。

この改善作業はUXD本部が中心となって行いましたが、BUのメンバーも巻き込む必要があるので、兼務の形を取りました。BUにはBUの評価基準がありますが、CXDとしては顧客に本当に寄り添えているかを評価基準としました。

三石|
シナリオの設計、実践内容どれを取っても素晴らしく、ここまで詳細お話頂き本当にありがとうございました。

データマーケティング運用3つのポイント

続きまして、具体的に回す際の運用のポイントです。
自社で回すのか委託先に任すのか、或いは期間限定で外部の人間を入れるのか、アメリカと比較すると日本は難しいところがあります。その辺り、運用支援のご経験豊富な岡本さん、ご説明頂けますか。

岡本|
結論から言うと内製で進めるか、外注するかは会社による、という答えになってしまうのですが、多くの会社様の支援を行ってきた中で、これからのデータマーケティング運用には3つポイントがあると考えています。

1. 目的と指標の徹底した共有

前出のGDO様の場合、顧客体験の向上が明確な目的で、顧客満足が指標であると言い続けているため、メンバーにも浸透していましたが、これは珍しい事例と考えています。
明文化された目的と指標を、会社としてグループとして個人として、関わる人全員が認識していなければうまく回りません。

どんなに速く走っても、方向が違えば目的地にはたどり着けないので、一番重要なポイントだと思います。

2. 高速仮説検証サイクル

PDCAやOODAループ等を活用し、仮説を立てて一週間単位のイメージで高速な検証を行うことがこれからは重要になってきます。

なぜ高速仮説検証サイクルが必要なのかと言うと、皆で共有できる「定石」や「常識」がだんだん通用しない世界になっており、「断片化」と「環境変化」が加速し続けているからです。ですので、実際に試してみなければ正解がわからないのが現状なのです。

実際に断片化は非常に進んでおり、例えばOne-to-Oneコミュニケーションチャネルでは、デバイスもアプリもツールも増えている中、顧客が何を使用しているか把握できず、顧客層によって取るべき戦略も変わるため、自社の環境下で実践してみる必要があります。

加えて、変化のスピードも加速しています。この1, 2年でメールのプライバシーに関する概念も変化し、去年行ったA/Bテストの結果すら当てにならない時代になっています。

一般化された知見や常識が役に立たないからこそ、施策レベルにおいては仮説検証を実践することが、自社に有益な知見を得る唯一の方法であると言えます。

3. “本当”のオートメーション化

シナリオの本数が多い中、分析→仮説立案→テスト→シナリオ実装のPDCAを回すことは非常に困難です。とりわけシナリオ実装でSQLを変えたり、MAでなくともCDP側で設定を行わなければならない等、データマーケティング運用の課題は手間のかかる実装部分にあります。本来は仮説を作る部分に注力しなければいけないのですが、そうなっていないのが課題です。

現在は機械学習の導入で、決定した目的変数に対応する抽出が可能になり、MAとつないでいる企業様もいらっしゃいますが、分析から仮説立案の過程は人間の頭で考えてから実装しているケースがまだまだ多いです。

今後は、人の行動様式から分析を行いその対象人物に可能性を見出したらそのままシナリオからターゲット抽出に結びついていくのです。AIの機械学習で分析が行えるので、分析からシナリオ設定まで一体化した流れを作ることができます。

今後の展望

三石|
岡本さんの素晴らしいお話を踏まえながら、今後の展望について志賀さん、お話頂けますか。

志賀|
共通マーケティングプラットフォームをご覧下さい。

この図の横に基幹システムがある前提で、トランザクションデータ・ログデータ・顧客マスターデータ等がこのプラットフォーム内に流れてきます。そのデータを取り込み、加工し、顧客の購買とログを紐づけていきます。同時にBIやAIを活用して顧客リスト抽出や、顧客に対するパーソナライズレコメンドを行っていきます。

データベースを中核に、ジョブ管理やETL、ログデータ取得などに様々なデジタルマーケティングツールを活用しています。MAに流す手前のAI統計解析で機械学習的なツールを入れており、最近ではAmplitudeの導入を考えています。

分析を行いながら最終的にアクションをする時、マーケッターが行うことは顧客リストを作ることなのです。その顧客に対し、誰に何を行うか決めるのがマーケッターの仕事であり、そのシナリオを考える一番最初の部分が分析なので、そこにAmplitudeを使うわけです。

三石|
今後、ファーストペンギンとして重要視したい領域はどこですか?

志賀|
一つは、Amplitudeを上手く活用して、もっと自動化したいと考えています。分析して顧客リストを作り、最終的にオートメーション化する際に必ず開発が入るので、そこを改善したいです。マーケッターがカジュアルにマーケティングのシナリオを考えられる環境実現のため、全体のワークフローをさらにオートメーション化したいです。

もう一つは、GDO内で使用しているファーストパーティデータを、顧客が他のサイトに行った時にも活用して頂き、他のサイトのデータも頂きながら、他サイト含めたCX向上につなげたいです。

三石|
志賀さん、岡本さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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ゲスト

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員 CMO/CIO 志賀智之

UNIX系開発会社を経て、株式会社ソフマップにてECサービスのリニューアルや新サービスの立ち上げを担当し、子会社取締役に就任。
さらにクライアントサービスの経験を積むべくネットイヤーグループへ入社した後、2008年に株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン入社。
IT戦略室長、情報活用推進部長を歴任し、お客様体験デザイン本部(現UXD本部)を設立、2018年より執行役員としてCMOとCIOを歴任。データを活用したブランディングからCRMまでフルファネルでのマーケティングと、全社的なIT統制やシステムのモダナイズを推進している。

株式会社ディレクタス 代表取締役 岡本泰治

リクルートを経て、ディレクタスを設立。数多くの大手企業のCRM及びEメールマーケティングの戦略を立案し、実行を支援。現在は顧客データを活用したクロスチャネルでのOne-to-OneマーケティングのためのコンサルティングとマーケティングオートメーションやCDPなど各種マーケティングツールの導入・運用支援を行う。
著作に『BtoC向けマーケティングオートメーション CCCM入門』『ケースで学ぶマーケティングの教科書』がある。

モデレータ

株式会社DearOne 取締役CMO 三石剛由

1999年日本電気株式会社入社。携帯電話の商品企画部門にて次世代端末の企画・メーカー公式サイトを立ち上げ。2001年、創業直後の株式会社D2Cに入社。モバイル広告立ち上げ期において企画営業に従事し、市場拡大を牽引。営業企画部長、おサイフケータイを活用した新規事業開発、放送連動事業部長、事業開発部長を担当。その後大手通信会社で会員ロイヤリティプログラムのデジタルマーケティングの実務責任者を担当。2019年、株式会社DearOneに入社。CMOとしてマーケティング戦略と新規事業を担当。

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