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新商品が毎日3,000点!中国発アパレルブランド「SHEIN」人気の秘訣【DXニュース】vol.5

2021.10.25

今回のプレゼンターは、国内外のリテールテックを10年以上見続けてきた株式会社DearOne代表取締役社長の河野恭久さん。前回は、「コード決済“一強”となったPayPayが迎える転換期」という記事から、キャッシュレス市場の今後や、プラットフォーマーとしてのビジネスでの勝利の仕方を探りました。DXニュース 第5回に取り上げるニュースは「アパレル初!謎の1兆円未上場企業“SHEIN”の正体」。それでは、はじめましょう!

謎の1兆円アパレル企業の強みは、圧倒的なUXとデジタルマーケティング

三石所長(当時。以下、三石) はじまりました、「DXニュース」第5回! ニュースプレゼンターは、前回に引き続き、リテールテックを10年以上見続けてきたCEOの河野さんです!

河野恭久さん(以下、河野) よろしくお願いします!

三石 今回は「河野さん厳選! 2021年8~9月 TOPニュース」の5本目ですね。
(※編集部注・河野さんが他にピックアップしたニュースについては、こちらの記事をご覧ください!)

河野 はい、5本目は「アパレル初!謎の1兆円未上場企業“SHEIN”の正体」です。

三石 それでは早速、紹介・解説をお願いします!


河野 じつは僕の中で「2021年8~9月 TOPニュース」の目玉であり、一番お話したいのはこちらなんです。三石さんはSHEIN(シーイン)をご存じでしたか?

三石 いえ、知りませんでした!

河野 今、大注目のアパレル企業です。ニュース記事では、最初にSHEINのサービスについての説明があり、後半は、1兆円企業と言われるほど成功していて上場の噂もあるけれど、上場するためには“課題”がある、という内容です。

さて、今回も、僕の視点から注目ポイントをまとめてみたので、こちらをご覧ください。

SHEINのニュース要点まとめ

河野 記事には、SHEINのサービスがどれだけ凄いか、ということが書かれているのですが、これはとんでもないです、バケモンですね。順番に説明すると、中国発のアパレルブランドですが、中国では利用者が少なく、アメリカで大人気になっています。

三石 メインの市場はアメリカなんですね。どの世代に人気なんですか?

河野 アメリカの中でも特にZ世代に人気があるそうです。アメリカのショッピングアプリでは3番人気のダウンロード数で、一時的にアマゾンを抜くダウンロード数だったそうです。ちなみに、アメリカ人の若者は「SHEINは中国企業」と知らずにダウンロードしているそうですよ。

三石 なぜ、そんなに人気なんですかね?

河野 ポイントは2つあります。1つは「UX(ユーザーエクスペリエンス)の高さ」。なんと、SHEINでは毎日3000~5000点の新しいアイテムが生まれ、販売されているんです。これまでは、1日に数百種類を販売するイギリスのboohoo(ブーフー)などが「ウルトラファストファッション」と呼ばれていましたが、SHEINでは数千種類になっています。

三石 毎日、数千アイテムが新たに販売されるなんて、想像できませんね。

河野 ユーザー層の中でも特に20代前半のユーザー満足度が高く、アパレルECアプリなのに「毎日アプリを開いている」そうです。凄いですよね。

三石 若者の日常に浸透しているんだ。

河野 2つめのポイントは「圧倒的なデジタルマーケティング」です。2019年ではInstagramで3240回、FacebookやTwitterにもそれぞれ2000回ぐらいポストしています。Instagramの公式フォロワーは2100万人を超えてます。

三石 なるほど。日本の3大SNSをおさえているというわけですね。

河野 さらに、KOC(Key Opinion Customer)と呼ばれる、中華圏のレビューサイトなどにて影響力を持った人物を活用しています。

三石 KOCとは、KOL(Key Opinion Leader)、つまり中華圏のインフルエンサーよりフォロワーは多くないけど友達やファンに影響を与えられる人。……でしたっけ?

河野 そうですそうです。まさに「デジタル上でのファストファッションの王様状態」を築き上げている企業です。……と、ここまで2つのポイントを説明しましたが、じつはSHEINが本当に凄いのはここからなんです。

三石 え、なんでしょう!?

ファストファッションから最短3日で届く
「リアルタイムファッション」の時代に突入

リアルタイムファッション

河野 裏で支えている独自のサプライチェーンが凄いんです。SNSやGoogleトレンドを活用してトレンド分析し、企画デザインにおいてAIを活用しています。

三石 AIがトレンドを読んで服のデザインを考えているんだ

河野 そうやって毎日3000アイテム以上をローンチし、まずは全てミニマムロット=1アイテム100着生産する――これが基本ルーティーンになっています。「世界のアパレル工場」と呼ばれる中国・杭州には約300の協力工場があり、全ての工場にはSHEINオリジナルのSCM(Supply Chain Management)システムがインストールされていて、製造過程が効率化されています。

三石 最初は1アイテム100着と、最低限の数量しかつくらないんですね。

河野 そうなんです。そして、ここからが皆さん興味のあるところだと思いますが、ローンチした商品の売れ行きがよければ、システム上で在庫調整や生産指示が自動的に入り、工場はすぐさま増産に着手します。つまり、受注が先で、その後に生産するという「C2M(Consumer to Manufacturer)モデル」を実現しています。とんでもないですね。

三石 どのぐらいの期間で量産されるんですか?

河野 企画から生産販売までに要するリードタイムは最短3日間です。

三石 めちゃくちゃ早いですね!

河野 ここからは僕が独自でまとめた資料になります。

SHEINのニュース要点まとめ2

三石 ファッション業界も「世代」で分けられているんですね。第1世代、第2世代と。

河野 そうそう。第1世代はZARAやH&Mなどの「ファストファッション」で、リードタイムが2週間でした。第2世代は「ウルトラファストファッション」で1週間。そして、SHEINは第3世代で、ファストではなく「リアルタイムファッション」。いやぁ、とんでもない時代が来ましたね。

三石 なるほど、これは凄すぎですね。河野さんが「一番の目玉」と言った意味がわかりました。

ECというよりSNSに近い? 瞬発的に売れるインフルエンサーと継続的にバズり続けるKOC

SNS

三石 ところで河野さん、SHEINのアプリは実際に触ってみたんですか?

河野 SHEINのアプリ、もちろんインストールしてみました。

三石 河野さんに実際に触ってみた感想を聞く前に、僕の感覚を伝えると、SHEINは「洋服を売る」という概念ではなく、メディア化していると思うんですね。普段、僕らがInstagramやTwitterなどのSNSを見ていると、何かのブランドが広告で出てくるから、自然に洋服の情報が目の前に流れてくるじゃないですか。

河野 確かに、目に入りますね。そして気になったものはタップする、と。

三石 SHEINはそれと同じ感覚で扱う、「SNSに近いアプリなのかな」と思ったんです。ユニクロのアプリを立ち上げるときは「ユニクロが欲しいから」と目的設定されているけれど、SHEINはそうではなく、SNS、メディアになっているんじゃないかなと。

河野 確かにそうですね。ただ、UIとしては一般的なECのように、メンズやウィメンズ、さらにシャツ、アウター、ボトムスとカテゴライズされていて「ECっぽい」んです。下にスクロールしていくと、一番下に「#dailydrops」というコーナーがあり、ここに毎日1000以上の新しいアイテムが追加されています。アクティブ率の高さに繋がっているのは、SHEINのTOPページのおすすめ商品が見られる「RECOMMEND」と、この新商品が見られる「#dailydrops」だと考えられますね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

SHEINの機能は「EC」でありながら、毎日当たり前のように見る

「SNS」「メディア」の立ち位置になっている

三石 なるほど。「KOC」、「C2M」というキーワードも出ましたが、今まであまりKOCという言葉は聞きませんでした。

河野 KOCは恥ずかしながら僕もよく知りませんでした。

三石 今後、マーケティング上で重要になっていきますよね。というのは、今までのようにインフルエンサーから瞬発的にバーンと売るだけではなく、KOCを使って継続的に売り続けようということだから。インフルエンサーとKOCを分けて考えていて、この辺りはトラフィックを作るときに重要かなと。

河野 分けてますね。インフルエンサーはbyname(名指し)で有名人を使っていて、KOCは継続的にバズりを狙って、そこから新規客を獲得している、ということみたいですね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

瞬発的に注目度を高めて売る「インフルエンサー」と、

継続的にバズりを生み続ける「KOC」を分けて考えることが、

今後のマーケティングでは重要になる

毎日3,000点のアイテムを生み出すのは、
人口の多い中国ならではの「発想」そして残る「課題」

三石 面白いですね。もう1つの「C2M」に関しても、技術力とか裏側の仕組みが凄いですよね。僕らは昔の中国をイメージしてしまいますけど、最近はもうパーソナライゼーションしたデータ活用もいろいろなアプリやECで実現している。中国企業だからこれができていて、中国ならではの強みが生きていると感じました。

河野 発想が日本人と違いますよね。毎日3000アイテムを100着ずつつくっちゃう。その工場を束ねる交渉力がもう……。

三石 その通りで、日本などの人口が少ない国では発想自体が出てこないですよね。大量にぶん回せないから、ぶん回すイメージがつかない。中国人だからこその生産力。

河野 そうですね。

三石 1つだけネガティブなことを思ってしまったのは、「買ったものを大切に使う」という考えとは真逆で、どんどん消費しろって話じゃないですか。そこが今、世界で注目を集めている考え方と真逆だから、どうなのかなと思いました。

河野 さすが三石さん。それが記事の後半に書いてある“課題”なんです。要は、サステナビリティに欠けると。

三石 なるほど、そこが上場への課題なんですね。今回のニュースも面白かったです! ありがとうございました!

≪三石所長(当時)`s Memo≫

毎日、3,000~5,000アイテムを新たに生産する「発想」は、

人口の少ない日本では生まれづらく、「中国ならではの強み」が生きている

―――次回の【DXニュース】では、何かと混同しやすい「デジタルとDXの違い」について、河野さんが解説していきます。ぜひお楽しみに!

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